2015-05-14 09:00
佐川美術館で山下清展を見た。
私の中では、山下清は芦屋雁之助が演じたTVドラマ『裸の大将放浪記』のキャラクタだ。
初めて見た貼り絵作品は、経年劣化と退色が激しく正直なところ残念だった。面白かったのは、彼のスケッチで、紙に太いマジックインキでグイグイと描いてある。陰とかは丹念な点描でつけてあって、このようなやりかたもあるのかと驚いた。
山下清の貼り絵作品は、その技法から、どこかしらゴッホの油絵を連想させる。本人も意識していたらしく、ゴッホのそれを真似た油絵の自画像が残っている。展示の説明では「ゴッホは生前に自分の絵が評価されなかったのは残念だ。それに比較して自分は幸せである。」という趣旨のことを語っていたらしい。
展示は年代順に並べられていて、生涯を通して作品がどのように変化していったかが一望できる。そこでわかることは、山下清の絵は、彼が年をとるにしたがって徐々に「うまく」なっていったということだ。最初のころは遠近法も無視したプリミティブな強い絵だが、晩年の絵はきちんとパースもとれて構図も整っている。「へた」から「うまい」に変化している。
山下清とは逆に、ピカソの画業は「うまい」から「へた」に変化したことはよく知られている。「青の時代」として知られる写実を基礎に置く表現から出発し、キュビズムや「ゲルニカ」などの「ようわからん」奔放な表現に向っていった。
表面的な技法の類似から、山下清とゴッホが引合いに出される。しかし、私は、山下清はピカソと比較するのが面白いのではないかと思う。作品の変化のベクトルが真逆であるところがポイントではないか。また、不遇だったゴッホとは異なり、両者とも生前に高い評価を受けている。
いずれにせよ、山下清とピカソはどちらも幸せな画家人生を送ったのだと思う。